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暦の改訂について (2026)

天文現象を予測するには,太陽・月・惑星などの運動について知らなければならない.これまで本書では,米国ジェット推進研究所JPL (Jet Propulsion Laboratory) が惑星探査用に編纂した月・惑星の暦で,国際的にもっとも広く用いられているDE (Development Ephemeris) シリーズを採用してきた.具体的には昭和60年版(1985)からはDE200,平成15年版(2003)からはDE405平成28年版(2016)からはDE430という具合である.

令和8年版からは,その後継にあたるDE440を採用することとしたので,ここに整理する.

暦の比較

DE430とDE440のおもな違いは以下のとおりである.

暦の違い

天体別に具体的な黄経・黄緯・動径の違いをグラフにすると以下のようになる.ただし,惑星は日心座標,月は地心座標,いずれもDE430の数値からDE440の数値を引いたものである.平成28年トピックスのグラフと比較すれば,今回の改訂による影響はかなり小さいことがわかるだろう.

暦象年表の表値については,赤経は0.001 s (15 mas),赤緯は0.01″(10 mas),距離は0.0000001 au (15 km) までであるから,太陽・月・内惑星・土星では時折四捨五入により違いが出る程度である一方,木星・天王星・海王星ではそれなりに違いが出てくる.理科年表 [外部サイト]は表示桁数が少ないので影響も小さく,暦要項ではほとんど影響は現れない.

図1a 図1b 図1c
図1d 図1e 図1f
図1g 図1h 図1i

では,DE440とDE430に大差はないのかというと,じつはそうとも限らない.長期にわたる月の黄経およびの時刻を比較すると,むしろDE440のほうが差は大きいことがわかる§.この差については,将来にわたって検証していく必要があるだろう.

図2j 図2k

最後に,おもなパラメータをまとめておく.

表1:おもなパラメータの違い
項目IAU2009/2012DE430DE440
au [km]149 597 870.700149 597 870.700149 597 870.700
GMS [×1020 m3s-2] 1.327 124 400 411.327 124 400 4191.327 124 400 412 794 19
質量比 (MS / MP)
水星6023 600.6023 682.6023 657.945
金星408 523.719408 523.719408 523.719
地球+月328 900.5596328 900.5598328 900.5597
火星3098 703.593098 703.593098 703.55
木星1047.348 6441047.348 6251047.348 631
土星3497.90183497.90183497.9018
天王星22902.9822902.9822902.951
海王星19412.2619412.2619412.26
地球と月の質量比0.012 300 03710.012 300 03690.012 300 0370

) masとはmilliarcsecond,すなわち角度1″の1/1000を表わす単位.→本文(‡)に戻る

§) 厳密には各暦の長期版DE406/431/441を比較している.→本文(§)に戻る

暦象年表2026より